ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

しばちんのお弁当

今週のお題「お弁当」

 

 ぼくは私立の中学に通っていた。家がど田舎にあったから、周りに私立校は無く、県の中央部にまで通うのに片道3時間かかった。が、通学時間はそれほど苦では無かった。電車は座れたので、読書したりぼんやりしたり、単語帳を見たりしてなかなか有意義に過ごしていた。

 しかし大変だったのは母親である。毎日のお弁当作りは明け方から始まっていた。だから、作って貰っているだけで有り難かった。味は二の次である。ある時、昼食時、クラスメートの友人がぼくのお弁当からおかずを取った。食べた感想は「しばちんのお弁当、美味しくない!」と言われてしまった。

 確かに美味しくない!美味しくないよ。でも、母親には何も言うことが出来なかった。その次の日も食べましたよ、美味しくないお弁当を。それが中学から高校卒業まで続いた。「まずいなー」とココロの中で密かに思いながら。