予備校生の時、Y先生が影響を受けたという、坂口安吾の「白痴」を読んだ。読み終えた瞬間、いつもの電車の中の空間が歪んで見えた。文学という「毒」を初めて感じた。そこからぼくは文学の虜になった。
太宰治、中上健次、村上龍、吉本ばなな、赤坂真理、村上春樹、阿部和重、夏目漱石、そして滝本竜彦、佐藤友哉。滝本竜彦、佐藤友哉はぼくと同世代だ。だからなのかとても共感できた。特に佐藤友哉はミステリーの要素が強く、清涼院流水などの「新本格派」と言われるジャンルの要素があった。虚構の世界(小説の中)に隠喩(換喩と言い換えてしまってもいいかも知れない)が含まれていた。分かりやすくいうと宮藤官九郎のシナリオのような(彼のシナリオには様々な小ネタが含まれている。)それを抽象度をあげている感じ。
文学ばかりでは疲れるので、気軽に読めるエッセイもたくさん読んだ。東海林さだおさんの「丸かじりシリーズ」は今のテレビや雑誌のB級グルメの奔りだったと思う。そして松尾スズキの毒のあるエッセイはとても面白かった。
今ではネットの方が面白いからそちらばかり見てしまうが、やはりたまに本が読みたくなる。特にぼくは文庫本が好きだ。「安い」というのもあるが、気軽に持ち運べて鞄の中に入れてもかさばらないのが良い。秋の夜長に久しぶりに読書がしたくなった。