ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話⑩

 「キミは将来何になりたい?」私は答える「人を助ける仕事がしたいです。」彼は鼻で笑う「キミらしくないな」。私はバカにされていることを知りつつ「あなたのような。」と答える。

 黒いベルトの高級そうな腕時計をさすりながら「私は誰も助けた覚えはない。誰かが助かっている、というならば私の手柄ではないな。」相変わらずだな、と思いながらそれでも私はやはり感謝している。

 大した事ではない、大した事ではない、と呟きながら家を出る。その足取りは鉛のように重たく、よろめきながら駅へ向かう。ヘッドホンで音楽を聴きながら、息を切らしながら歩く。友人は言う「αにしてΩな命題だ。」それならばひたすら歩くしかない。

 恋愛は失敗を繰り返している。それでも私は恋愛をするのだろう。勝ちも負けもないレースの行方は。それが生きる希望であり、きっと、きっとそれは素晴らしいはずなんだ。と私を今日も動かす。

 駅には虹色の傘をさした女性が歩いている。憂鬱な午後の中で。そう言えば今日は日曜日だったと彼女の傘が教えてくれた。相当ヤバイな(笑)と思いながら。さて、ホームに立ち、上りの電車を待つ。乗り換えは面倒くさいが。そうして生きている。