ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話⑲

 「なかなかしんどいです。」私が言うと、「私のほうがしんどいよ。毎日飽きもせず人の話を聞く毎日なのだから。」彼は答える。そんな事言ったって仕事じゃないか、と答えようとして、彼も人間なのだ。という当たり前の答えと、ツラい気持ちもよく分かる。

 以前勤めていた病院の医師はよく飲んだくれて過去の話をする。「あたしの親戚はあたしが医者になることに猛反対したんだよ。味方はいなかったよ。それでもあたしは努力したよ。それで医学部に合格したよ。」

 その女医は決まって西川史子氏の事を批判する。「あたしのほうが偏差値の高い大学だよ。彼女は〇〇大学だろ?」なんだか話がゲスな方向に向くと決まって他の先生が「まま、落ち着いて。美味い酒を飲もう。」と言ってお酌をする。

 火事場にガソリンを巻く行為である。その女医はさらに悪酔いして、前後不覚になり帰り道もフラフラになりながら帰る。後日その話をすると覚えていないそうだ。靴が片方で家に着いたらしい。まあ、家に帰れただけで良かったと思う。

 医師もまた人間である。彼は冷静さを装っているが、疲れているらしい。何処にあったか、カルピスをゴクゴク飲みだした。美味いなと一言言う。さらにアイスまで出てきた。マジックを見ているかのようだった。彼は言う、最高だ。もちろん私は彼の事を尊敬している。