ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話㉚

 苦しんで、苦しんだ先には何があるのだろう?私は照れ笑いを浮かべながら、いつものように端の席に座る。たくさん笑うことはもはや無く、わずかばかりのカネとガラクタばかりの部屋で一人、TVを見ている。

 TVでは、アイドルらしい女の子たちが踊りながら歌っている。それをぼんやり眺めて、知らない顔ばかりで、名前も分からない。ただ彼女たちはきっと頑張っているのだろう。良い歌だな、と思う。CDは買わないが。

 彼は言う「技術を学びなさい」。私は彼のこういう物言いに慣れている。が、時に反発したくなるのも事実だ。「そんな事が役に立つのでしょうか?」と答える。彼はこう答える「それはキミ自身が決めることだよ」と。私も37。そんな言葉も受け入れなければならない。

 私はいつもの公園で缶コーヒーを飲みながらタバコを吸う。公園では親子連れがキャッチボールをしている。そんな幸せそうな景色を眺めて、自分と程遠い存在だな、と痛感する。僅かな嫉妬を感じる。

 家に帰ると冷蔵庫の中身は空っぽだった。今から買い物に行くのはダルい。私は水を飲み、空腹を紛らわそうとする。昨年買ったパソコンのモニターを眺めながらネットサーフィンをする。

 最近、やっとスマホに買い替えた。彼女は言う「あなたには似合わないわ」と。その言葉を思い出す。メールしようかと思ったが、何を書けばいいのか分からない。確かに私にはスマホは似合わない。