ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

「万引き家族」レビュー

 「ノンフィクションのようなフィクション」果たしてこの物語はフィクションなのだろうか?私はこれをノンフィクションのような錯覚を受けた。この家族は現代日本に存在する、と。

 この血の繋がっていない家族はグローバリズムによって生み出された「最下層の貧困」の生活をしている。それはこれだけ豊かになったはずの日本で。私は以前介護の仕事をしてきて、そのような家族を目の当たりにしてきた。

 小泉改革アベノミクスは一部の富裕層と多数の貧困層を生んだ。この物語は貧困層の家族の物語である。主人公は日雇いの派遣の仕事がダメになったり、子供は学校にも通えない。娘は風俗で働くしか道がない。婆さんの年金を当てにしながら生活している。

 しかし、この家族は果たして「不幸」なのか?私にはどうしてもそう思えない。こんなに愉快で逞しく生活している家族は、人間が孤立している社会である意味でユートピアかも知れない。

 確かに万引きは犯罪である。主人公は自嘲気味に「私が子供に教えることが出来るのは万引きの仕方くらいなもんですわ」と。やがてある事件があり、子供は学校に行けるようになる。それはとても希望に満ちた事だ。彼に必要だったのは万引きではなく、教育だ。

 この映画は私の心の中に澱のように残っている。はたしてこの家族は幸せになったのか?彼らは偽物の家族だったのか?私には答えが見えない。今でも時々考える。