ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話㉜

 片腕の無い男は言う「人生は悲しみに満ち溢れている」と。男は片腕が無いからか、それとも人生というものはそうなのか、私は計りかねていたが、男に掛ける言葉を私はまだ持っていない。

 時に私もそう思う。が、そんな事を言っても始まらない。私は割合とポジティブなのだ。出来れば悲しみを笑いに変えたいと願う。悲しみを昇華させるのが芸術ならば、私がなりたいものは芸術家だ。無論、カネはいらない。

 精神安定剤の残りを数えながら、医療保険というものに感謝する。「病は気から」というが、所詮気の病と思うこともあれば、なかなかしんどいときもある。誰でもそうだろうけど。姉には到底理解して貰えないのが残念だ。

 昨夜はずっと夢を見ていた。起きたときは覚えていたが今は忘れた。夢なんてそんなものかも知れない。眠りが浅かったのかも?。とりあえず早くこの熱帯夜が終わって欲しい。エアコンで風邪を引くか、熱中症になるかなんて選びたくない。

 今度、片腕の無い男に会ったら缶コーヒーを奢りたい。私に出来るのはそれくらい。病院の待合室には不幸が満ちている。それを不幸と思うか、定めと思うかで随分違ってくる。喫煙所で彼に会うのを待っている。