電脳空間

つれづれなる事を書いています。

精神科医との対話

 兎に角、カネがない。それ自体は大した問題ではない。労働と生活の中にある本質、それこそが革新的マルクス主義者の言い分なんだろう。私はマルクスを知らない。「資本論」は読んだことがない。

 兎に角、腹が減った。スーパーに行き、饂飩を買った。鍋に火を入れると熱気で蒸しかえる部屋の湿度はさらに上昇する。饂飩を鍋ごと啜りながら、アパートの窓から階段を眺めている。

 派遣の仕事が来ていないか、スマホでチェックする。明日の夜に交通整理の仕事があった。それに応募し、折返しメールが来た。派遣の仕事の良いところは、取っ払いで支払われることだ。

 手配師からのメールは派遣先の住所と電話番号が載っているだけだった。Google Mapで検索し、地図を保存する。電車の乗り換えをナビにて検索する。それも保存する。

 育ての親が言うには私は生みの親にコインロッカーに捨てられていたらしい。だからよく、育ての親は「あんたは人間じゃない。コインロッカーから生まれたんだ。」と。冗談なのか、悪意なのか分からないが、私は笑うしかない。

 友人はいない、彼女はいない、親もいない。休みの日は一日中スマホのゲームをしている。それが唯一の趣味なのかも知れない。私には何もない。人に認められるものが何もない。

 努力はしてきたつもりだ、私なりに。一生懸命仕事をしても、所詮、誰でも出来る簡単な仕事だ。評価なんかされた事はない。高校でも真面目に勉強した。それが唯一の武器になるんじゃないかと思っていたから。

 大学を卒業後、カネばかりが出ていく。就職活動をしてもどこにも雇ってもらえず、今の現状に相成った。クタクタに疲れて帰り、泥のように眠る毎日。いつ糸が切れてもおかしくなかった。

 気がつけば40目前だった。せめて人並みの幸せを、と思ってみてももう遅い。精神科に通院したのは19の頃からだ。マラソンランナーが孤独な長距離走を走る途中で、足の骨を折った、という感じだ。

 人並みでいいんだ、人並みで。と思ってみても。砂を噛むような日々だ。iPodからはダンスミュージックが流れてくる。そのテンションで。きっとそれは正しい。そう、私は正しいのだ。