ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

小説「プログラミング・ガール」⑥

 私はKAGOMEのことを考えるのを止めた。そして、この計画について考えることに没頭した。KAGOMEを利用した、詐欺計画だ。

 計画の内容はこうだ。まず、21時にSがKAGOME接触する。そしてパーティーチャットを開き、KAGOMEの自慰行為を他のユーザーと眺める。

 Sにその話をすると、「そんなのやだよ」と嫌がったが、「そのためのお前への報酬だ」となんとか説得した。

 その間、私はサーバーにトラッキングしてミラーサイトへのアクセスを試みる。そこにダミーのプログラムを仕込み、サーバーへの負荷をかけて、意図的にシャットダウンする。

 このサーバーがえらく脆弱なのは以前から知っていた。21時にしたのは一番アクセスが集中し、KAGOMEへのパーティーが増える時間がチャンスだ。

 Sに「出来るだけ時間を引き伸ばすのがお前の役割だ」と私は説明した。Sは「あまり気乗りしない話だね」と肩をすくめた。

 この話にSが乗らなければ、私は計画を止めようかな、という気分になってきた。もともとイタズラ半分で考えた計画、犯罪ごっこだ。

 おそらく試みればこの計画は十中八九、成功する。しかし、そこで幾ばくかのカネを得てもしょうがない気がしてきた。

 私は別に金持ちではないし、カネにキレイ・汚いなどがあろうはずもないことは知っている。しかし、詐欺でカネを得てもいい気分はしない。どうしようか、真剣に悩んだ。

 

続く。