ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話。

 パソコンのモニターを見ると、そこに映し出されていたのは、アイドルのようであり、また、V-Tuber もようでもあり、まあ、結局のところただの数式だった。

 仮に「接点t」と名付けるならば、一体何の接点なのか気になるところではある。曲線と曲線を結ぶ、その「接点t」は、見れば見るほど、人生の謎に包まれていた。

 たいがいにおいて、曲線、というものは美しいものである。「接点t」も充分に美しく、また愛おしかった。

 学生時代、私は文系だったが、近所に東大の理三に通っている、家庭教師のアルバイト学生がいたため、何故か数学を毎週日曜日の午後に勉強させられた。

 その学生さんも、ウチの母親が親しかったので、アルバイトを断る事が出来なかったのだろう。私も東大生も、どちらも不毛な時間を過ごし、何にも生まない時間だった。

 予備校で私大文系コースを選んでいた私を、東大の理三は羨ましがっていた。しかも行きたいところが文学部だと聞くと、お互い力なく笑うしか出来なかった。

 つまり私には数学は全く必要はなく、彼が私に教えることは何もなかった。一応、形ばかりに学校の教科書というテキストを開いて、期末試験の勉強をするのがせいぜいだった。

 とは言え、彼はやはり頭が良く、教えるのも上手だった。数学だけで受けられる文学部があれば、私はとても恵まれた環境にいた、と言えるだろう。

 「接点t」を見てると、数式の美しさを語っていた、彼の言葉を思い出す。数学はやはり私の頭では苦手だったが、美しい証明がある、ということは分かった。

 スマホゲーに課金してばかりいる現在の私だが、まあ、「課金は愛」だと思っている。オタクがアニメイトに通うが如く。