ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

小説「プログラミング・ガール」④

 Sは昔、証券マンだった。だから隠語を使うのが好きだった。以前、新宿のバーでよく飲んでいた時にやはり、隠語で遊んでいた。

 つまり、「麺の硬めは」は「明日」。「スープ辛め」は「昼」。「ニンニク入れる」はいつものバーで。だった。

 バーでの待ち合わせをこれを使い、遊んで決めていた。Sは慎重な男なので、今回は世間話で済ませるつもりだった。

 私としても好都合だった。Sも薄々今回の件が警察にバレるとマズい事を感じ取っていた。ラーメン屋はロットの回転が早く、みんなラーメンに集中して我々を見るものはいなかった。

 Sは証券マンだったにも関わらず、全くインターネットに触れた事がなかった。黒板にどんどん銘柄を書き込むタイプの古い相場師、といった風情だ。

 それについて私は聞いたことがある。そしたら「インターネットに載ってる情報は使えない。」と一言で片付けられてしまった。

 また、相場の勘を鈍らせる、とも言っていた。ではどこで情報収集するんだい、と聞いてみた。すると、「新聞だよ。毎日、新聞の数字を覚えるくらい見てたら分かる」と。

 なるほど、と思った。今回、Sの相場師としての勘が役に立つと思われる。問題はSが引き受けてくれるかどうか、だ。

 

 続く。