ななこ♂の部屋

小説「プログラミング・ガール」を書いています。

精神科医との対話。

 男は「私は発見しました!」興奮気味に、そう主治医に話しかける。主治医は面倒くさそうに、また始まったか、という顔をしている。

 「マカですよ、マカ!鬱にはマカが効くのです!」主治医は「そか」と答える。あまりのリアクションの無さに、私はイライラした。

 「男の勲章ですよ!」いよいよヤバくなったな、という目で主治医は「何が?」と尋ねる。「PUNK なんですよ!」これは入院やむ無し、と主治医は思った。

 「そか。マカで、男の勲章が、PUNK なんだね」主治医は言う。男は満足そうに頷く。いよいよ支離滅裂になっている事を、男は微塵も気づいていない。

 主治医は言う「精神科って何のためにあると思う?」男は答える「ガス抜きですよ!こんな話、先生しか聞いてくれませんから。職場でも、友人にも、家族にも無視されます」。

 だいたい、精神科でガス抜きするから、通院する人は自殺率が低くなるらしい。鬱の予兆には散歩や掃除、自分のルーティーンを大切にする事を、私は知っていた。

 主治医も、それで私の気の済むならば、といつも付き合っている。私は一流大学を卒業して、エリート官僚になったはいいが、ストレスが多すぎる。

 たまにはガス抜きしたくなるらしい。その為に精神科に通院している。主治医は「俺をバカにしてるんじゃないかな⁉」という気がたまにするが、ま、仕事だ。

 彼の病名は「多重人格」。言ってしまえばサイコパス。そんな男が親の言いなりで完了なんかになるからイケナイ。就活とは、親を説得することから始まるのだから。

 男は料理人になりたかった。が、親は専門学校に行きたかった、が親の圧力には逆らえず、言えずじまいでここまで来た。

 料理人になりたかった男と、官僚になってしまった私と、多重人格の彼がいる。いや、なんか一人称で遊んでみたが、無理。私は小説家には向かないね。