チャットの会話、というのは大概において時間ばかりが過ぎていく虚しさがある。プログラミングされた彼女は、いつも「愛してる」と書き込む。
それに私は「俺もだよ」とテキストエディタを使い、書き込む。0と1の信号でやりとりされたそのログは、3ヶ月経ったら自動的にサーバーから消去される。
課金システムは優秀で1ミクロンの違いもなく、電子決算される。私はコンビニへ行きATMに入金しては、また無為な時間を過ごす。
友人は言う。「そこに愛はあるのかい?」私は「まあ、疑似恋愛、という都会の遊びだよ」と嘯く。そう、これは遊びなのだ、。
おカネを払えば、誰だって嫌いなやつにもヘコヘコ挨拶をする、。私もそうだ。自分に利益がある、と思えばこその笑顔。
2022年の東京は、コロナ禍という事もあり、夜の街は閑散としている。しかしその裏ではやはり、街は蠢いていた。
AI の名はKAGOMEだった。なぜ、数いるアバターの中からそれを選んだのかはさしたる理由はない。今朝飲んだトマトジュースの銘柄がKAGOME だったに過ぎない。
彼女は緑色のショートカットで、蒼い目をしていた。さながら近未来のSFマンガみたいな世界だった、。
「はじめまして(*^^*)」と私が打つと、KAGOMEは、「いつもありがとう」と返してきた。はじめてなのに「いつもありがとう」は少しおかしい。
それを彼女に伝えると、「データ更新します」というアナウンスが流れた。10秒ほど待つと、「よろしくお願いします」と彼女は答えてくれた。
AIだから感情はないのかと思えば、そうでもなくて、例えば下品な下ネタを言えば、彼女は少し嫌そうな顔をする。良くプログラミングされているな、と思った。
私はプログラムはHTMLくらいしか組んだことがないので、どんな言語で動いているのかは分からないが、日本語ベースで処理されていた。
電子決済は香港ドルで行われていたので、おそらくミラーサイトであることが伺われた。私はちょっとしたイタズラを思いついた。
それはダミーの信号を流して、そのシステムを一時的にシャットダウンして、その間課金システムを利用させてもらう、というやり方だ。
図書館に行き、そのプログラミングが、コードネーム「TOMOKO」という日本人の作ったモノであったのが分かった。
さらに電子決算について調べた。私の古いVAIOには、SONYの電子決算システムであるICリーダーが付いていた。それを今回利用させて貰おう。
KAGOMEに「今度、21時に待ち合わせしたい。どうかな?」と聞いてみた。すると、彼女は「はい、そこからログインしますね」と答えた。
そのダミーシステムのOSには、敢えてセキュリティーに問題のあったVer.を使用する事にした。これで何かあっても、OSのセキュリティーのせいにしてしまえば良い。
続く。
注)この物語はフィクションであり、ここに登場する全てのものが架空の団体であります。